原色の朝、一杯の熱い、フルーツのような珈琲を飲む。
そのために、必要な言葉たちの徒然。

'16.03.29.





つい30年位前まで、場末の名画座の扉を開けると、薄暗い席のあちらこちらで
煙草の煙がもくもく揺らめいていたのがある意味懐かしく。

そんな光景、今は昔。

クリーンな名画座で、塚本晋也版「野火」のリバイバル。



暴力と血と死体の山。不穏なエフェクト音と土着的ノイズ。
非常識にも、レイテ島の、戦争とは無関係に輝き続ける鮮やかな緑と、焼夷弾のオレンジがやけに美しく感じられて、頭から離れず。

「鉄男」のジャンクさは、こんな形で昇華されたのだなとしみじみと感銘。




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'16.03.26.





久しぶりに偶然、通り抜けたこの公園。
ずっと昔、すぐそばの雑居ビルの一室で、缶詰めのように働いていたんだ。

徹夜も多い仕事で、休憩室も無かったから、真夜中、この公園に缶コーヒーと一本の煙草を持ってきて、寒さにやられそうにながら、息抜きしてた。
今となっては全て懐かしい。

私達は、しょっちゅうめげたり、堕ちたり、自暴自棄になってしまったり。

「覚悟をもって」とか「覚悟がある」だとか、しょっちゅう耳にするけど。

その覚悟や仕事は、最終的に「貫いた」者だけが勝ち。貫かない覚悟に意味がないとは言わないけれど、それはフェイクのような戯れ言。

繊細さは、時にこの世に美をもたらすけれど、時に人を傷つけもする。

この平坦な戦場をサヴァイヴするには、オーガニックでもケミカルでもなく、
別の何か、
もっと別の何かが、今、強烈に必要なんだと思うよ。









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'16.03.23.

20年前ならデザイナーズレストラン、10年位前は新しい感性のカフェ、そしてここ何年かはコーヒーショップ、ロースターの特集をこぞって出版社やメディアが取り上げております。
一連の流れのブームとでも言いましょうか。

次はビーントゥバー、、かな。

どっちにしても、佳境期になると、総集的な真打ち的なものが出てきますが、これもそんな一冊だと、一読して感じられました。
大体、現在のコーヒーの位置、方向性のようなものが網羅されています。

『Discover Japan 特別編集
ベスト・オブ・コーヒー』

2016年2月増刊号ということなので、もしまだ書店で見つけられたら、是非ご覧になってみて下さい。

KUSA. 喫茶は、特集
「ニッポンのコーヒー最先端はローカルにあり!」
に1ページ取り上げて頂いております。

そして、これはお客様に指摘されて気づいたのですが、表紙裏に全面写真でブルーボトルさんと並んで、私の焙煎時の光景が載せられております。






サードウェーブの雄、お洒落でとっても浅煎りなBlue Bottle Coffeeと、精神的珈琲屋文化を標榜しつつを淡々と田舎で焙煎を続けるKUSA.喫茶の対比。しかもこの焙煎時の写真は、恐らくタンザニア ブラックバーン、ブルボン種のイタリアンロースト。まあ、黒光り。

編集者の意図を感じざるを得ませんが、何れにせよ有り難い事です。


そうそう、これは余談ですが。
私達夫婦は、常連さんとはちょっと別かもしれませんが、一人一人のお客様とそんなに世間話を交わしたりするタイプの人間でもありませんし、そういう方向性のショップを目指している訳でもありません。
まして混雑時は、そのたった一杯だけのライブのドリップに集中しているので、ひょっとしたらぶっきら棒に感じられる方もいるかもしれません。
ただ、丁度、今回のムックでも取り上げられている大坊さんが、別の本で語っていた言葉、
「お客さんひとりひとりと会話を交わさずとも私が『その人の仕事や生活について何がどうなっても構いやしないと考えているわけじゃない』ということが伝わる瞬間があるのでは」。

は、至言ですので、大先輩には失礼を承知で、そのまま私目のスタンスとしても引用させて頂く次第です。




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'16.03.21.



息吹だよ、春の息吹。

今年も良かったと思う、新しい命に立ち会えて。

まだまだ、一歩、いや二歩、進める。
共に、行進あるのみ。









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店内の壁画のような絵画、ちょくちょくお問い合わせ受けます。
こちらも同ペインターの作品。
攻撃的、細密的。
終わりかけた世界、廃墟のような工場地帯を抜けた先に、美しいモスクが鎮座していたなら。
そんな感覚すら感じさせられます。

ご興味ある方は、
『Daisaku Kawada』
at U.K.まで。








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パナマ共和国、ゲイシャ種の第二弾、「コトワ農園 リオ・クリスタル区間 ゲイシャ種 ナチュラル精製」
は今週で品切れの予定。

珈琲の第二フェーズを一度体験しておきたい方は是非に。

第三弾は、4月頭から。



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'16.03.20.





『p3』

20年位前は、東長寺の境内地下に、穴蔵のように潜めいていた場所。
すこぶるディープなアートやライブがひっそりと行われていた。

今は、道路向かいに、普通に在る。

興味深いスペースであることには変わりないけど。

その日はコンテンポラリーダンスアートで、日本のコンテンポラリーは、舞踏と仲睦まじく融合して、新しい地点に到達している。
ソロとソロでの動きでは、難解で、抽象的で、少し厄介なインプロみたいなものが、コンタクトし出すとそこに新しい絶頂が訪れ出す。

店と人との流れと一緒。

感動はないが、新たな視野が開ける。
皮肉めいた言い方ではあるけど。




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KUSA.'s coffee beans→『the Meaning of life』

私たちは毎朝、または夜遅くまで、珈琲の生豆の選り分けをし、カッピングを繰り返し、焙煎している。

焼き上がった豆達は、お出で下さった方、通信販売でお申し込み頂く方、もちろんどなたにでもお売りする。

でも、業務用にお使い頂く珈琲豆となると、他の人の手に渡り、そのお店様それぞれが新しい味へと昇華させ、新たな対価を産み出していくものになるし、ブランドと言っては大層だが、良い方向にも悪い方向にも、職人として築き上げてきた私の豆たちに影響を与えていく訳で、どなた様にもお分けする訳にはいかないものになる。



東金市の古い街道沿いに、これからの男性お二人が、素晴らしいコーヒーショップをスタートした。

『the Meaning of life』さんという名前だ。

取り外された天井、打ちっ放しの土間、ぽつぽつとした灯り、そして、椅子とテーブルを兼ねたタイヤつきの無造作な板。





浅煎りのコーヒーチェリーならではの果実感にこだわり、エアロプレスのみで抽出。

これを「サードウェーブ通過後の郊外に作られた形」とカテゴライズしてしまうのは容易いが、とことん研ぎ澄まされた舌の感度により毎日徹底的にカッピングして産み出す一杯、、フランクでいて何処にもない空気感を醸し出すスペース。

10年代世代の新しい息吹きだ。



つまりは、私たちが珈琲ビーンズを担当させて頂く事で業務提携させてもらうのは、このような何らかしらの挑戦、格闘をしていくだろうお店さんやお人たちだけだ。

魔術的な極深煎りから果実的浅煎りまで。
全てエキゾチシズム。

今、KUSA.の活きた珈琲豆達を提供させて頂いている全ての店舗様、アーティスト様は、例外なく、誇り高く、徹底的なオリジナリティーを持ち合わせ、店を運営し続けるだけの気概があり、そして私たち自身を触発して下さっている方たちだけ。

大好きです。








KUSA.の珈琲豆を飲める場所、買える店 - trackbacks(0)
'16.03.13.



そうか、珈琲という液体は、詩と連動する。
夜更けの珈琲が、夜更けの新しい焙煎手法が、一遍の詩を産み出すのだ。

私に、「言葉」をご依頼下さっているお三方、暫しお待ちを。

物理的な時が、なにぶん必要なものだから。


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'16.03.12.

ちょっとした事情があって、古い書棚を整理していたら、うっすら埃を被った随分と前の歌集が出てきて、思わず読み耽ってしまった。
歌人だった友の処女歌集だ。

世の表現物の多くは、往々にして、時を経ることで色褪せ、ピントが少し狂い、大抵はノスタルジアという枠へと収まってしまうものだが、ある種の言葉、絵画、音、造形物は逆により強靭に、そのありのままの佇いで世界に抗い続ける。

この歌集にしたってそうかもしれない。当時はひょっとしたら軽く読み流してしまっていたのかもしれないが、20年を経た今、これは、確かに、私の胸の奥の襞をカウンターし続ける。










『日々の底眠る言葉にうっすらと
砂をかけてく明日という墓地』


『さびしさがさみしさへと変わる瞬間
空をくぐる橙色の葉々』


瞬間はもちろん「とき」と読ませるのだろうし、作者の意に反したとしても、橙色を「とういろ」と勝手に韻を踏ませたなら、これらの若き歌人の拙くも情緒的な一遍一遍は、おぼろげながらも確固たる陽を与えてくれるだろう。
自分を取り巻く世界はひょっとしたら自分にも味方してくれているんじゃないかという確信。

それは、とても、素敵だ。


















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'16.03.09.

私たちが行う日々津々浦々の善行の数々は、その殆どが雨樋から滴り落ちる水滴のように小さなものだし、またその事によって誰かに賞賛されたり、評価される事などまずないものだ。

しかし、ある澄み渡った晴れた朝に、気付くかもしれない。

一滴一滴の雨水がやがてトタンのバケツを一杯にするように、そのささやかな善行の積み重ねがいつしかその人の人格に徳のようなものを与え、それこそが世界を変え得る力になり得るかもしれないという事に。











今夜は、また一旦、冬に逆戻り。

冷たい雨が、屋根を打つ。

冷たい風が、薄い窓硝子を揺する。

午前2時、今、私たちのいる場所。



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一時、開店時間を変更致します.

子供を授かるちょっと前まで、30代中盤位までか、仕事でも遊びでも徹夜になっても大したダメージは無かったし、実際、店を始めるまで就いていた職業はどれも定時に上がれる事などなく、その日の仕事は何時になってもその日のうちに終わらせるというのが当たり前だったのだが、10年を経て、肉体的に劣化、気概だけで乗り切るのに限界を感じるようにもなってきました。

ただ、健康維持の為には休養の時間だけでなく、最低限のお金や生活環境など諸々の条件も必須ではあるので、健康第一と言うのは容易いものの、健康の為に仕事を減らしてスローにやっていこうというブルジョワっぽい考えには簡単には至らないのだが。

という訳で、仕事量はセーブしないものの、物理的に仕込み時間なども間に合わなくなってきている為、申し訳ございませんが、喫茶営業は、暫くの間、全日13時からのオープンとさせて頂きます。


喫茶営業の時間も確保致したくは思っておりますので、KUSA.喫茶のアシスタントさんを一名、加えたいと思っており、その態勢が確定するまでの間、どうぞご容赦下さいませ。




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