秋の日は、本当につるべ落としのよう。
ここ、音楽も無く静寂に包まれた珈琲屋は、
4時過ぎには、もう、微かな夕陽に包まれて。
「珈琲屋文化」って、少し薄暗い灯りの下、読みかけの書物に目を落としたり、
気心知れた誰かと議論交わしたり..。
大勢でわいわいやるのではなく、思索の時間を得るための場所。
カフェとはまた違う、珈琲屋には珈琲屋のそんな佇まいがあると思うのだけど、
最近、そういうことを分かって下さるお客さまが増えたのは、
店主としてはとても嬉しいことだ。
霧雨の中、古い本をめくる音が聞こえ、カウンター越しにぼそぼそと話し声が聞こえ、
珈琲をすする音が響き..。
そんな日の店内は、まるで、乗客たちが取り残されて遭難船に乗り合わせたみたいだ。
もしくは、夜汽車を逃して、待合所の蛍光灯の下でふーっと息つく感じ。
KUSA. は、今日いたってそんな感じで、
何となく珈琲をドリップする手も、心なしかスムーズで。